スパイ駆除大作戦(上)
コンピューターには、いろいろなトラブルがつきまとっているものである。中には、「なんでだろう…??」の世界を超え、ものすごく奇っ怪な現象が起こることもしばしばある。つまり、コンピューターのトラブルには、「何々したから、こうなった」という規則性は殆んどなく、ある意味、そういう因果関係を完全に無視している場合が多いのである。
こんなときトラブルシューターは、どうするかって?…そう、ただひたすら冷や汗を流しながら、試行錯誤していくしか道はないのだ。
<<インターネットがおかしいんです!>>
いつものようにコンピューターに向かって仕事をしていると、電話が鳴った。
「ハロー、あぁ、○○さん。どうしました?」
「あのぉ、インターネットがおかしいんです」
「えっ?…あはっ、あははっ、あはっ、そりゃぁ、笑っちゃいますね」と私。
―― おかしいから笑う、そんなおやじギャグをいっている場合ではない。
どうやら相手は、結構深刻そうである。
話を聞いてみると、コンピューターは、いつものように起動するのだが、2日ぐらい前からインターネットにアクセスしようとしてInternet Explorerをあけると、普段は日本の新聞社のページがホームページとして最初に出るように設定してあったのに、なんだか訳のわからないサーチ画面みたいなものが出てくるようになってしまった。また、別のページへ移動しようとアドレスバーにURLを入力しても、他のページに飛んでくれないし(つまり、ブラウズできない)、ホームページの設定を元に戻しても、またすぐに設定がそのサーチ画面に変わってしまうという。
「もう、お手上げ状態なんです」とお客さん。
「あのぉ、アドレスバーに『about:blank』って出てませんか?」と私。
「あっ、そうです。『about:blank』って出てます」
「○○さん、それスパイウェアにやられちゃいましたね」
「スパイ…ウェア?」
【指令】
「おはよう、ヘルプする君(確か、随分昔に放送していたテレビドラマ「スパイ大作戦」ではフェルプス君だったと思う)、○○邸のコンピューターにスパイウェアが潜入したものと思われる。さて、今回の君の指名だが、その『about:blank Search for…型』スパイウェアを駆除することにある。例によって、君もしくは君のノートブックコンピューターがスパイウェアに犯され、おかしくなっても当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、この独り言は、自動的に消滅する。成功を祈る」
…などと訳のわからないことをいいながら、そのお宅に向かったのだった。
<<スパイウェア…って?>>
『スパイウェア』ってなんですか? 私がそのお宅へ到着して最初にお客さんの口から飛び出してきた言葉である。
確かにコンピューターを使用する人なら誰しもが『ウィルス』という言葉は耳にしたことがあるだろうし、多少なりともそれがどんなものなのか、また、どんな対策をしなくてはならないのかなどは知っていることと思う。しかし、ことスパイウェアに関しては、かなりの数の人が認識をしておらず、更に恐ろしいことは、ほとんどのウィンドウズ系のコンピューターにそれが入り込んでいるのが現状だということである。
では、『スパイウェア』とは、いったいなんなのだろうか?
簡単に言うと、コンピューターを使用するユーザーの個人情報などを勝手に収集し、そこから得たデータをマーケティング会社などのスパイウェア作成元に送るアプリケーションソフトのことである。最もタチの悪い「キーロガー」と呼ばれるヤツは、キーボードのストロークを盗み取ることが可能なのである。つまり、打ち込まれた暗証番号やパスワードを読み取ることができるのである。しかも、これらのスパイウェアは、ほとんどがユーザーの知らないうちに勝手にコンピューターにインストールされてしまうという厄介なシロモノなのだ。
ただ一つ『ウィルス』との大きな違いがあるとすれば、「ウィルスは伝染するが、スパイウェアは伝染しない」というところだろう。だが、コンピューターやユーザーに『害』をもたらすということでは、なんら変わりはないのだ。
<<…っで、他にどんな症状があるんです?>>
今回のお宅の場合、症状は、すでに説明したとおりであるが、このお客さんも気になっていたようなので、「about:blank」の症状以外に、いったいどんな症状が現れるのか、いくつか例を挙げてみた。
- ポップアップ広告など、要求していない広告が勝手に飛び出してくる。最悪の場合は、次から次へと飛び出してきて手が付けられなくなることもある。
- ブラウザのホームページに設定したページが、いつの間にか勝手にどこかの広告ページに書き換えられていて、それを変更できない状態になっている。(ただし、この場合はabout:blankと違って、まだインターネット上を閲覧することはできる。)
- 自分ではインストールしていないのに、知らないうちにブラウザのアドレスバーの下に見知らぬサーチバーが出現した。
- 今までよりインターネットの接続速度が異常に遅くなった。インターネットの回線がなにかに占有されているようだ。
- システムリソースが大量に使用されシステムが不安定になったり、パフォーマンスが低下したり、またはプロセスが停止したり、エラーが頻繁に出たりするようになった。
- 最近、大量にジャンク(Spam)メールが届くようになった。
他にもまだ症状はあるようだが、上に挙げたものが主立ったところだろう。
――あれっ、「もう、いくつか当てはまった」って顔をしている人がいるようだが。
ちなみに、このお宅のコンピューターに入り込んだ「about:blank」は、かなり悪質なものの部類に入る。
<<どこから、どうやってコンピューターに入ってくるの?>>
「でも、これってどうやって入ってくるの?」とお客さん。当然の疑問である。
一般的にスパイウェアは、なにかのアプリケーションソフトなどをダウンロードしたときに一緒にセットで配布されることが多い。つまり、無料ソフトなどをダウンロードしたときにくっついてくるオマケである。しかも、もらってもちっとも嬉しくないオマケである。
通常、何らかのソフトをダウンロードしてインストールしようとすると、そのソフトの使用条件の許諾を求められる。その際、その内容をすべて読んでから承認する人は、ほとんどいないと思う。スパイウェアを制作する連中は、そこをうまく利用している。つまり、この使用条件の中には、「このソフトをタダで使わせる代わりに、貴方の個人情報を提供してもらいます」みたいな内容の文面が謳われている場合が多い。だから、全く法律に触れることなく、しかも堂々と貴方のコンピューターの中へ入り込んでこられるのである。
また、別の方法としては、ある特定のウェブサイトを閲覧しただけでスパイウェアが入ってしまうようなこともある。特に、いかがわしいサイト(アダルトサイトなど)は要注意なのだ。
――ここで、「あっ、ヤバイかも。」と思っている人も結構いるかもしれない。
ちなみに、このお客さんが「ヤバイ」と思ったかどうかは定かではない。
さて、いよいよスパイウェアの説明も終わり駆除作業に取り掛かるのだが、
そのお話は、次回(2月14日)ということにしよう。
斎藤 浩(Nihon System Workshop代表) 2005年1月31日