Q.
先日、メールに付いてきたリンクを面白半分でクリックしたら、突然画面に「ご入会ありがとうございました」と出てきて高額な登録料金を請求されました。「支払わなければ法的な手続きを取る」と書いてありましたが、こんなことが本当にあるのでしょうか?どう対処したら良いのか教えてください。
A.
これは、いま巷で大流行している『ワンクリック詐欺』です。結論から言うと、なにもせずに『無視』して問題はありません。
料金を振り込んだり、退会願いのメールなどを送信したりしてしまうと、詐欺犯たちの"思う壺"でしっかり「騙されやすい人リスト」に追加されてしまい、次から次へと"カモ"にされてしまいます。間違っても自分の身分を明かすようなことはしないでください。
ワンクリック詐欺は、その存在を知っていればなんでもないことなのですが、それを知らない人にとっては、とても不安な思いをさせられるものだと思います。質問をしてきた方の他にも、この詐欺に関してまだ知らない人が多いようなので、今回は、この詐欺について説明しましょう。特に、アダルトサイトを閲覧している方は、被害に遭わないようにするためにも、是非、知っておいてください。
■ ワンクリック詐欺とは?
ワンクリック詐欺とは、メールで送られてきたリンク、あるいはアダルトサイト内にある「入場する(Enter)」などを一度クリックしただけで、勝手に入会手続きが行われ、高額な登録料金や利用料金を請求してくる詐欺行為のことです。
以前、日本で携帯電話を悪用して『ワン切り詐欺』というものが流行りました。これは、携帯電話にベルを一回だけ鳴らす着信があり、着信歴が残されているので、そこへかけ直してみるとアダルトサイトなどにつながってしまい、電話をかけたことに対して高額なサイト利用料金を請求してくるというものでした。
基本的にワンクリック詐欺もワン切り詐欺も、アダルトサイトや出会い系サイトを利用したという後ろめたさを感じる心理や不安や脅しに負けてしまうという人の心理をうまく利用し、高額な登録料などを騙し取ろうとする点では、同質の詐欺といえます。
あえて違いを挙げるとすれば、通信技術の進歩に伴って、今度は電話機能ではなく、携帯電話でもコンピューターでも利用できるメール機能とインターネット機能を悪用しているというところでしょう。また、実際に請求書のような画面を表示できるという点でも、電話より信憑性があると感じさせることが可能なのだと思います。
では、ワンクリック詐欺は、具体的にどんな手口を使ってくるのでしょうか。
■ 詐欺の手口
比較的多いパターンが、ワンクリック詐欺が仕込まれたサイトへのリンクが貼り付けられたメールを送ってくるというものです。
通常、送りつけてくるメールは「出会い系サイト」や「18禁のアダルトサイト」などの宣伝広告がほとんどです。タイトルなどに工夫をこらし、ユーザーに"興味本位"でメールを開かせてしまうのが彼らの狙いです。なかには、「久しぶり」などと、いかにも知人からのメールらしく装った件名で送信され、受信した人にうっかりメールを開けさせてしまうように工夫を凝らしているものも多くあるようです。
では、送られてきたメールを開けて、その中にあるリンクをクリックするといったいどうなるのでしょうか。メールに付いているリンクは「出会い系サイト」や「18禁のアダルトサイト」などにアクセスするもので、リンクをクリックすると当然そのサイトにジャンプします。次にページが表示されたと思った途端、以下の例文にあるような内容が含まれた契約書らしき画面が表示されます。
『ありがとうございます。会員登録が完了しました。△日以内に利用料金△万円を指定した銀行口座に振り込んでください。なお、支払い期限を過ぎても入金が確認できない場合は、利用料金に加えて延滞手数料が別途に加算されます。更に、規約によりお客様の登録情報及びIPアドレス、アクセス履歴などを基に、法的手続きによってお客様のプロバイダーからインターネット接続契約にある住所、氏名、電話番号および勤務先などの情報を入手することができますので、その情報を基に自宅訪問等で直接回収させて頂く場合もあります。また、その際に要した費用は、交通費等も含めすべてお客様の負担となりますのでご了承ください。』
このように、ユーザーの同意なしで自動的に入会登録手続きが行われてしまい、高額な入会金などの振込みを要求され、「支払わなければ取り立てに行くぞ」と脅されるという訳です。
これに加え契約書には、自分が使用しているコンピューターのIPアドレス(Internet Protocol Address)やOS(Operating System)のバージョンなどが表示されていたり、更には「個人識別番号」なるものがあてがわれていたりして、ユーザーに対していかにも「貴方は、すでに特定されている」という危機感を与えようともしています。
もちろん、これはメールに限らず自らアダルトサイトや出会い系サイトを閲覧していても同じようなことが起こります。ここでも「同意して、入場する」や"サンプル画像のサムネイル"などをクリックすると同じような手続きが行われてしまうということです。
■ 騙されないためには・・・
この詐欺で一番気を付けなくてはならないことは、「登録完了」と「支払い義務」という言葉、そして「法的手続き」という脅し文句に惑わされないということだと思います。
ただ一度クリックをしただけで入会登録や会員登録が完了する筈などないのですから、心配は無用です。また、法的にもこのような架空請求や不当請求の場合、「請求されること」と「支払いの義務があること」とは別な問題なので、こちらも大丈夫です。
オンラインで登録や契約をする場合は、実際に利用規約を読み、それを納得したうえで指定のフォームに必要な個人情報を入力して、はじめてそれが成立する訳です。また、オンラインでこれを行う場合は、電子消費者契約法に基づいて正当に行わなければならないのです。この法律によると、「事業者は消費者に対して申し込みの内容を再確認させる画面を用意しなくてはならない」とあります。つまり、事業者側は、ユーザーが入力した内容にミスや勘違いなどはないかを確認できるようにしなくてはならないということです。
例えば、入会登録書の画面を表示する前に、「入会登録をするには、入会金△万円が必要です。よろしいですか?」と有料であることを事前に示し、ユーザーに「はい」「いいえ」の選択をさせ、更に登録を完了させる前には、ユーザー自身が入力した内容を再確認させたうえで、「この登録に必要な額は合計で△万円です。支払いに同意しますか?」そして、「同意する」「同意しない」と意思の確認をするなどです。
しかし、ワンクリック詐欺においては、ユーザーに対して、このような契約意思の有無を確認する作業は一切行われていないので、事実上、契約自体成立しておらず、無効ということになります。
また、契約書に表示されている貴方のコンピューターのIPアドレスやOSのバージョンなどは、ウェブサイトの管理者が見ることができる極めて基本的なデータなのです。例えば、どこかのウェブサイトにアクセスした際には、IPアドレス、OSバージョン、ブラウザのバージョン、訪問日時などある程度の情報はウェブサイト側に分かってしまうということです。しかし、だからといってこれらから貴方自身を特定することは不可能なのです。
加えて、ここで個人識別番号と呼ばれているものは、おそらく、アクセスした際のクッキー(ウェブサイト利用者を識別する情報)から拾っているか、あるいは、ただ単に適当に数字を羅列したものと思われますので、全く気にしなくて構いません。
更に、プロバイダーからインターネット契約時の情報を入手すると書いてありますが、一般的にプロバイダーは、顧客個人情報の保護に関しては厳格に対応しているので、裁判所が令状を発していない限り個人情報をリリースすることはあり得ないと考えて良いでしょう。
要するに、請求画面に表示されている内容は、すべて"コケ脅し"という訳です。
■ どう対処すれば良いのか?
あくまでも、『無視』をしてください。現時点では、この方法が最善とされています。なかには、請求を促すメールなどが送られてくる場合もありますが、これらも無視しましょう。
間違っても、料金を振り込んだりしないことです。「△万円で不安が解消できるのなら」とお金を払ってしまうと、"鴨が葱を背負ってやって来た"とばかりに詐欺犯たちの『騙されやすい人』のリストに加えられてしまい、次から次へともっと高額な請求をされるようになるかも知れません。
更に、退会願いなどの連絡もしてはいけません。もし、連絡をしてしまうと「退会手続きを行うには、一度入会金を振り込んで頂かなくては、その手続きができません」とか「規約通り、貴方には支払いの義務があります」や「法的な手続きを取り、訴えます」あるいは「顧問弁護士を通じて小額訴訟を起こします」などとメールでしつこく連絡をしてきて、なんとかお金を騙し取ろうとしてくるからです。
ワンクリック詐欺の被害に合わないようにする基本は、とにかく『無視』です。
予防策としては、ここでもウィルスやスパイウェアのときと同じように、両方の対策ソフトをインストールすること、そして、『不審なメールは絶対に開かない』ということが重要です。今回の質問にもあるように面白半分や興味本位で開けたりすることは、間違ってもしないでください。
また、請求画面が消えなくなってしまったり、数分間隔で警告画面などが表示されたりする場合は、すでにコンピューター内に「Trojan.Binjo」などのウィルスや悪質なスパイウェアが入り込んだ可能性がありますので、すぐに両方の対策ソフトを使用して駆除を試みてください。
なお、これらの作業をしても効果がない場合は、かなり悪質なプログラムが侵入していると思われます。このような悪質なプログラムを駆除するには、ある程度の専門知識が必要です。特に、レジストリを操作する場合は、一歩間違えるとウィンドウズが起動しなくなる場合がありますので、十分に注意をしてください。もし、これらの作業を自分でする場合は、あくまでも自己責任でおこなってください。
さて、以前このコーナーの「スパイウェアにご用心【復習】編」で、アダルトサイトなどには、スパイウェアなどがたくさん仕込まれていますと書きました。今回の説明でも分かるように、これらのサイトには、詐欺まがいの仕掛けも数多く仕込まれているのです。従って、こういうサイトには、できるだけ近づかないようにしたほうが身の為…ということが安全にインターネットを楽しむための鉄則なのではないでしょうか。
最後になりますが、参考のために警視庁が提供しているワンクリック詐欺の料金請求書のサンプル画面(パソコン画面例)がありますので、必要であれば見てみてください。
* 警視庁ホームページ(ワンクリック料金請求)
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/haiteku/haiteku/haiteku35.htm
また、興味のある方は、『電子消費者契約法』(電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律)の条文もどうぞ。これは日本の法律ですが、ワンクリック詐欺を行う連中は、日本からそれを行っている場合が多いので、被害から身を守るための対抗策として知っておいても損はないのではないかと思います。
* 電子政府の総合窓口(電子消費者契約法の条文)
http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect.cgi?IDX_…
さて、このコーナーでは、『フィッシング詐欺』、『ファーミング詐欺』そして、今回の『ワンクリック詐欺』と、既に三種類の詐欺に関して説明をしてきました。実社会の詐欺と同じように、再び新たなオンライン詐欺の手口も登場してくることと思います。オンライン詐欺の被害に遭わないように十分に注意をしてください。
情報提供者: 斎藤 浩 (NSW) 2005年11月7日